新しい森田療法
外来森田療法の治療の基本的枠組みは、「できないこと」と「できること」をきちんと分けることから始まります。
悩んでいる人(とその家族)にとって発想の逆転となります。
「できないこと」とは何でしょうか。
自分の悩み、苦しみ、不安、落ち込み、などをなんとかしたい、楽になりたい、逃げ出したいと望んで、それに取り組んでしまうことです。それはある意味では、当然のことですが、そこに落とし穴があります。それを何とかしようとすればするほど、その悩み、苦しみに注意が引きつけられます。その人の持つ健康な力をそのためにつぎ込んでしまい、結果としてその悩み、苦悩を強めてしまうのです。
それだけではありません。このように悩む人は、自分に自信がなく、他の人に対しておかしな言動していないだろうか、悪い印象をあたえていないだろうか、とくよくよしてしまいます。そして人前では自分を抑えてしまい、素直な気持ちの表現が苦手です。
また物ごとに取り組むときに、きちんと出来ていないのではないか、不完全ではないのか、と悩み、逡巡し、決断できなくなります。
そしてよいコミュニケーションを取ろう(これをコミュニケーション神話と呼びます)、完全な作業、活動をしよう、と考え、結果として、行き詰まります。それは足りないのではなく、過剰ななのです。
そして自分は、だめな人間、なにかが足りない人間と自分自身を決め付けがちです。それは足りないのではなく、自分自身を縛っている「こうあるべき」という少々硬い考え方(これを「べき」思考と呼びます)に縛られているのです。悩む人は、いわば頭でっかちで、考えすぎる人なのです。
また悩む人は、足りないもの探し、欠点探し、ないもの探しの名人です。そしていわゆるハウツー本、自己啓発本にはまりやすい傾向もあります。診断基準、病名などはこの欠点探しのリストに過ぎないという理解も必要です。
このような悩みを取り去ることは、「できないこと」です。
では、「できること」とは何でしょうか。それは日々の生活場面での行動です。悩み、苦しむ人たちは、「できないこと」に悪戦苦闘し、「できること」をおろそかにしてしまっている人たちです。
「できないこと」を知り、それを受け入れ、受け止め、「できること」を治療者と一緒に探し、それに取り組むことが外来森田療法のスタートとなります。そこから悪循環を抜け、その人が次第に健康な力を実感し、成長、変化していくことを援助します。それが外来森田療法です。
